
「で? どうすんだ?」

「まずはギルドを作らねば始まらんな」
【冒険者ギルド】

「というわけでたのもー!」

「頼むから目立つ真似は止めてくれ……。周りの奴らが無茶苦茶見てんじゃねえか」

「ふん、良いではないか。この世界樹の迷宮を制するはわらわ達であること、彼奴らに教え込むのも悪くなかろ」

「…………」

「ほれ、さっさとせんか。ギルドの名前とメンバーの登録じゃぞ」

「……はいはい」

(……ああ、結局俺はいつまでもこいつに振り回されるのか……)

「――よし! ギルド名はオレンジガーベラじゃ!」

「理由は?」

「花言葉は神秘、冒険心。ロマンを求めて樹海に挑む我らにはピッタリじゃろ?」

「ロマンじゃなくて金の間違いじゃね?」

「黙れ小童」

「…………」

「ギルドマスターはこのベアトリクス様が務めよう。オズ、お主もさっさと書かんか」

「……はいはい。オズ、と」

「うむ、これで完璧じゃな。さあ樹海に挑もうではないか!」

「…………ん?」

「れっつごー!」
【三十分後】

「おいオズ、どこに行っておったのじゃ。おかげで街中探し回るハメになったではないか」

「悪い。ちょっとギルド長に呼ばれてな……ってお前俺を捜してたのは嘘だろ」

「な、何故じゃ?」

「口もとにソースがついてる」

「ッ!」

「……まあいいや。あのな、ギルド長の言葉なんだが……二人だけで樹海に挑むのは無謀だとよ」

「……まあそうじゃろうな」

「まあそうじゃろうなって、わかってんのか?」

「わかっておるわかっておる」

「ギルドのメンバーを募集したりした方が良いんじゃねえのか」

「嫌じゃ」

「なんでだよ」

「……言わせる気かえ?」

「あん?」

「…………ちゃ、ちゃんと理由ならあるわい。ただ、そのぅ……」

「ちゃっちゃと言えよ。俺は樹海でおっ死ぬのはご免だぜ」

「…………オズ、お主なんか期待とかせんのか?」

「はぁ?」

「天下の美少女ベアトリクス様が、頬を赤らめ視線を逸らしておるんじゃぞ? 男として期待せんのか?」

「何を期待すんだよ」

「実はわらわがお主に想いを寄せていて、誰の邪魔も入らぬ二人旅をしたい、とか。他の女を引き入れたらお主を独り占めできないから寂しい、とか」

「ないな」

「――ちっ、つまらん男じゃのぅ。からかい甲斐がない」

「…………」

「まあ理由は簡単じゃよ。二人の方が実入りはよかろ? くふふふふ」

「……予想通りと言えば予想通りだな」

「金は命よりも重いんじゃ。がっぽがっぽと儲けさせてもらうからのぅ。ふふ、今から笑いが止まらんわ!」

「さっきロマンを求めてとか言ってなかったか…………っと、そうだ、まだ伝えることがあった」

「なんじゃ?」

「ギルドを登録したら俺ちゃ自動で公国民になるんだと。でだな、迷宮に挑む前にゃ公宮に出向く必要があるらしいぜ」

「ふむ……。七面倒だがそれが掟というなら仕方あるまい。郷に入っては郷に従えじゃ」

「だったらギルドメンバー増やせよ」

「嫌じゃ」
【さらに三十分後】

「ふむ。公国への入国試験とな?」

「詳しくは迷宮の衛兵に聞けだとよ」

「ふ。このベアトリクス様にかかればいかな試験も余裕の一言じゃな」

「ほんとにそれで済みゃ良いけどな……」
【さらにさらに三十分後】

「さて、現在の状況を纏めるぞ」

「なんなんじゃあの衛兵。こんなところにわらわ達を放置しおってからに!」

「衛兵に連れられた樹海の途中から、入り口付近の広場までの地図を描け、か……」

「……どうも入国させる気がないように思える試験じゃのぅ」

「ま、やってみようぜ」

「うむ……、おお、そうだオズ。確かスキルポイントやらを入手しているのではなかったか?」

「ああ、そうだな。俺は逃走率アップとAGLアップに振ったぜ」

「逃げる気満々じゃな……」

「あのなあ。そもそも二人で挑むこと自体が無謀なんだって」

「じゃが実入りはよかろ」

「まあそうだけどよ……。五人でも簡単に全滅するのが樹海らしいじゃねえか。それを二人っつったら厳しくないか?」

「生存率を上げるため、か……」

「ああ、そういうこと。お前はキュアでも取っといてくれよ。俺が前衛に行くからな」

「ん? わらわも前衛じゃないのかえ?」

「前衛は敵の攻撃に晒されんだよ。お前は回復役なんだから後衛で回復に努めてろ」

「ふむ……正論であろうしな、まあ従ってやろう。……ふふっ」

「……なんだよ」

「なんでもないぞ? ……わらわの教育方針はあながち間違っておらんかったのぅ」

「お前に教育された覚えはねえよ!」
【三度目の三十分後】

「おい、オズ」

「なんだよ」

「地図を書き終え入国試験を終えたは良いが、一体の魔物も倒しておらんではないか!」

「仕方ないだろ! 装備も何も心許ない状況で剣なんか振るってられるか!」

「むぅ……」

「一旦公宮に報告したら、後は好きなだけ探索も出来りゃ戦闘も出来る。落ち着けよ」

「…………」

「おい?」

「……うむ、そうか、そうじゃの……。すまんかったな、オズ」

「いや、別に良いけどよ……」

「よっし、そう決まったと来たら即行動じゃ! 行くぞオズ、ボヤボヤしてるでない!」

「あ、おい、待てよ。…………ったく、あのババァ……」

「誰がババァじゃ!」

「うおっ」
【ベアトリクス】Lv1 巫術マスタリー1 キュア1
【オズ】Lv1 逃走率アップ1 AGLブースト2
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