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飽き性のくせに次々と新しい設定を妄想して楽しむたかのんの自己満足専用ページ。掲示板にてつらつらと妄想語り進行中。『はじめに』を呼んでください。感想もらえると飛んで喜びます。掲示板は一見さんお断りに見えないこともないけれど、基本誰でも書き込みOKです。
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月の欠片リスペクト
山鳥さんの所で連載中、「月の欠片」のリスペクト作品です。
山鳥さんの了承は取ってあるぜー!

 こいつはいよいよもって面倒な作業だ――そう、叶睦月は思った。
 階段を下る足取りは重い。鉛でも仕込んでいるみたいだ。自分の足だが。
 睦月の目指す所は一階、つまり一年生達の教室。例によって水無月に「名前に月の異名を持つ子を連れてきて」と言われ、やむなくやって来たのだ。
 自分の学年ならまだ良かった。が、既に二学年で名前に月の異名を持つ生徒は自分を含め四人出揃っている。という事は向かわねばならないのは必然的に一学年及び三学年。
 流石に三学年は色々忙しいだろう。睦月の言葉で対象は一年の生徒に変更された訳だが――。

 

 負けた。正々堂々戦って負けた。

 

 自分がわざわざこんな面倒な作業をしなければならなくなった元凶――つまり自分の右手を見て、睦月はため息を吐いた。

 

 たとえ理由がどうであれ、自分の良く知らない学年の階へ向かうのは気が引けるものだ。
 睦月もまたそれだった。彼の歩行スピードは今や亀レベルにまで達している。
 眉間に皺を寄せ、広い廊下を歩く。途中一年の女子生徒に「ひっ」などと失礼極まりない言葉を投げかけられたが、きっと自分の後ろについている地縛霊でも見たのだろうと思って気にしないことにした。
 
「いや、それはそれでものすごく嫌だ……」

 思考がスパイラル。モチベーションがどんどんどんどん負の方向へ向かって行く。
 大体二年生の男子が一年生の教室に行って何をするというんだ。対象は女子だという事がわかっているため、より一層気分は落ち込む。
 二年生の男子が、一年生の女子に「ちょっと良いかな」などと言って図書室に連れて行く姿を見られたらどう考えても誤解される。
 図書室は利用者が少ないのだ。つまり人がいない。人がいないところで男女が仲良く何をする? 答えは一つ――

 男子高校生特有のもてあまし気味な性欲をフル活用した妄想で、睦月の思考はさらにネガティブモードへとギアチェンジした。

 

 名前しか知らない標的を図書室に連れ込んだところで睦月の妄想は強制終了。
 目の前にはドア。上を見上げればプレート。プレートには「一年D組」と書かれている。
 間違いない。今回のターゲット――桜月弥生――はこの教室にいる、と思う。
 同じ学年の紅葉の証言によれば、彼女は放課後いつも教室の窓から外の景色を見ているらしい。
 という事は今もここにいるという事だ。睦月は自分の頬を叩き、一気にドアを開けた。

「失礼します」

 一応挨拶しつつ、教室を見渡す。
 野球部やサッカー部などのやかましい掛け声が遠慮なく入ってくる教室。その窓際に、対象と思わしき少女が立っていた。
 顔はわからないが、うん、後姿だけで十分美少女な気がした。
 窓から優しく吹き込む髪で散らばる、色素の薄いセミロングの髪。睦月は、ただ綺麗だと思った。
 窓の外への視線を外す事無く、少女が口を開く。

「何か用ですか?」

 明るい、ハキハキとした声だった。
 話しやすいタイプだ。多分。
 すっかり負のスパイラルから抜け出した睦月は、

「桜月弥生さん、だよね?」

 確認。これ大事。

「そうですよ~」

 やはり視線は外に固定したまま、弥生が答える。
 オーケイ、本人であるという確認は取れた。
 後は水無月の目的を端的に伝え、彼女を図書室まで連れて行けばミッションコンプリートだ。

「俺は二年の叶睦月って言うんだけど……」
「聞いたことありますっ。なんでも、氷の薔薇の心を唯一開かせたとかなんとか……?」

 知らず知らずのうちに、睦月は水無月の心を開いた人物として校内に知れ渡っているようだった。
 別に、心を開かれた覚えは無いのだが。……まあいつも一緒にいるし、他人から見ればそう見えるのだろうか。
 ……思考回路が別の所へワープした。ええと、今は……そう、水無月の目的を伝えるのだ。

 

 五分後。水無月の言い分を(三分の二くらい端折って)弥生に伝えた睦月は、彼女の返答を待っていた。
 後姿の彼女は、どうやら自分の身の振りを考えているらしい。睦月としてはぜひとも快諾して欲しい限りだ。
 決して水無月が怖いからでは無い。ないったらない。

「そうですねー」

 やがて、弥生がゆっくりと口を開き始めた。

「良いですよ。面白そうだしっ」

 こちらを向いて、ニコッと笑って見せた桜月弥生。
 その笑顔は、今までに見たどんな笑みよりも輝いて見えた。

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