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飽き性のくせに次々と新しい設定を妄想して楽しむたかのんの自己満足専用ページ。掲示板にてつらつらと妄想語り進行中。『はじめに』を呼んでください。感想もらえると飛んで喜びます。掲示板は一見さんお断りに見えないこともないけれど、基本誰でも書き込みOKです。
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リトルシスターパニック01
【主な登場人物】
・千織秋水(ちおりしゅうすい)
・千織彩夏(ちおりさいか)
・千織冬乃(ちおりふゆの)
・西村(にしむら)
「おーい秋水、帰ろうぜ」
 放課後を向かえにわかに騒がしくなった教室に、俺の名を呼ぶ声が響く。
 高校生活二年目を迎え、またもや同じクラスへと振り分けられた親友、西村が俺を呼んでいるのだ。
 教室出口で待っているらしい西村に「ちょっと待ってくれ」の意味を込めて手を振り返し、俺は新たに配られた教科書類の全てを机の中にぶち込んだ。
 今日は四月六日。新学期の開始日である。俺、千織秋水は、県立万葉高校二年B組に所属する、できたての高校二年生だ。
「よし、これでオッケー」
 まだ皺一つとてない教科書の置き勉を完了した俺は、ちょっぴり満足げな気持ちを抱きつつ西村の元へ向かう。
「んじゃー、帰るか秋水」
「おう」
 中学生以来の付き合いである西村と歩調を合わせつつ、俺は廊下を歩き昇降口へと向かう。
 万葉高校では二年生の教室が配置されるのは校舎の二階にあたり、三階に新人の一年生、一階に最上級学年たる三年生の教室が置かれる。年をくった分だけホームルームへ向かう労力を抑えることが出来る年功序列システムになっているため、各階層を結ぶ階段の元へ辿り着くと、まだまだ新しい制服を着用しぎこちなく歩く新入生らが三階から下りてくる姿がちらほらと見受けられる。
 俺と西村もぞろぞろと進む人の波に紛れながら階段を下る。
「……そういや、お前んとこの妹たちも入学したんだったよな」
 階段を下りきったところで、西村が急に思いだしたように言った。
 その言葉を聞き、俺は脳裏に妹の姿を思い浮かべる。双子だが二卵性双生児のためあまり似ていない二人の妹は、どちらとも万葉高校に新たに入学した新入生だ。
「彩夏も冬乃も入ってきたけど、どうかしたのか?」
 妹の名を出しつつ、西村に確認するよう問う。
「いんや。二人とも美人だから、早速人気になってるんじゃねーかと思ってさ」
「美人ねえ……」
 ふむ、と顎に手を当て考える。
 西村は初めて妹たちを見た時から一貫して二人は「美人」だと言って憚らない。一緒に暮らしている俺には全然わからないんだがな……。
 まあ、確かに彩夏も冬乃も顔立ちは整っている……とは思う。彩夏はボーイッシュで活動的な印象を与える溌剌な娘で、冬乃は物静かだが凛とした印象を与える清楚な娘だ。どちらもすらりと伸びた手足を持っているし、肌も透き通るように白い。まあ、ごく一部分のパーツ――端的に述べれば胸――は冬乃が圧勝しているけども。
 と、そこまで考えて俺は頭を振った。何を冷静に妹のことを分析しているのやら。妹は妹であって、兄たる俺にはただの家族以外の何物でもない。
 真面目に妹たちのことを考えてしまったことが妙に気恥ずかしくなって、俺は照れ隠しに西村へ違う話題を振ることにした。
「それより新しいクラス、どう思う?」
「斉藤さんがいてくれるだけで勝ち組だ」
「はは、なるほど」
 斉藤さんとは、西村が密かに憧れている学年のアイドルで、俺たちと同じく二年B組に所属する女生徒のことである。一年から二年への進級時、同学年の男子が最も気にしていたのが彼女の配属クラスのことで、一学年五クラスあるうち斉藤さんと級友になれる幸運を得たBクラス男子諸君が、喜びのあまり涙を流している様を俺は目撃している。逆にあぶれた男子が悔し涙を流す様も。全ては今朝の出来事である。
 また、斉藤さんは男子からかなりの人気を誇っているが、その人気っぷりに反してかあるいは人気過ぎる故に誰もが尻込みするのか、彼女には現在恋人の類が確認されていない。
 そのため万葉高校男子諸君の間では水面下において熾烈な争いが繰り広げられており、二年B組の男子は無条件で彼女の『クラスメイト』という多大なステータスを得たことで他の男子らに比べて一歩リードした、らしい。
 西村は、そんなことを語った後、斉藤さんの魅力をとくとくと語り出した。どうやら俺の目論見は成功したと見て良いだろう。
 だが、昇降口を出たところでいかに斉藤さんへと近づくか共に考えようなどとこちらに話を振ってきたため、逆に逃げ出せなくなってしまった。
 照れ隠しに成功したのは良いが、斉藤さんへの滾る思いを俺にぶつけられても正直困る。若干己の選択を後悔し始めつつ適当に相槌を打ちながら校門を後にした俺は、
「兄貴はっけーん!」
「んぐっ!?」
 甘ったるい声に耳朶を振るわせられながら、背中に突然の荷重を受けた。と同時、首元にするりと細い腕が巻き付いてくる。この痴れ者の正体は確定だ。
 だからとりあえず俺も相手も怪我をしないようしっかりとアスファルトの上にしっかり踏ん張って、衝撃を分散。後、なるべく低く威嚇するような声でこの不届き者の名を呼んだ。
「……おい、彩夏」
「あ、よくわかったねぇ」
 俺の背中に飛びつき、首に腕を回しているのは妹の彩夏であった。
 よくわかったねぇ、って、こんな事をするのはお前しかいないだろうが。
 これも愛の為せる技かな、などと世迷い言を呟く彩夏をどうしてくれようと思案していると、すぐ側からもう一人の妹、冬乃も姿を現した。
「兄さん、ごめんなさい……。いくら言っても彩夏は言うこと聞かなくて」
「あーっ、冬乃ずるいなあ。自分だけ罪を軽くしようとしてるなー」
「ずるいも何も冬乃はなにもしてないだろうが……」
 未だ俺にしがみついたままでいる彩夏の頭を軽く小突き、地面に降ろす。
「もう終わりか、残念残念」とケラケラ笑う彩夏に嘆息しながら、俺は横に並んだ双子の妹を改めて見やった。
 冬乃は例えるなら文学少女で、同じく彩夏はスポーツ少女。冬乃は物憂げな表情を見せていて、彩夏は底抜けに明るい笑顔を見せている。冬乃の胸部は自己主張が激しいが、彩夏はあまり目立たない……じゃなくてだ! 
 ……いやはや、つくづく似ていない双子だ。そりゃあ、似ていない姉妹など世の中にいくらでもいるだろうけども。
「しっかし秋水、相変わらず美人の妹二人に囲まれて羨ましいこってな」
 今まで俺たち兄妹のじゃれ合い(にあたるのか?)を眺めていた西村が、しみじみと呟く。やっぱり美人なのか、この二人。
 周りに視線をやってみると、ひそひそとこちらを見ながら何事かを呟く同校生徒たちの姿が目についた。ちょっと悪目立ちしすぎたかもしれないな。
「西村、彩夏、冬乃。急いで帰ろう」
「えー。もっと見せつけちゃおうよ。そして美少女新入生のあたしと兄貴の間にインモラルな噂を立てるのはどう?」
「馬鹿」
 俺はあくまで一般人の感性を持ち合わせた人間だと自負している。妹と変な噂が立ってたまるか。あと、自分で自分のことを美少女とか言うなよ。
 結局四人で連れ立って帰宅したが、俺と妹らに対する好奇の視線が止むことはなかった。二年目の高校生活に暗雲垂れ込めたらどうしてくれる、彩夏。
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