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飽き性のくせに次々と新しい設定を妄想して楽しむたかのんの自己満足専用ページ。掲示板にてつらつらと妄想語り進行中。『はじめに』を呼んでください。感想もらえると飛んで喜びます。掲示板は一見さんお断りに見えないこともないけれど、基本誰でも書き込みOKです。
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リトルシスターパニック02
【あらすじ】
千織秋水には彩夏と冬乃、双子の妹がいるんだ!
 他者からの好奇の視線に晒されるという居心地の悪さに辟易しつつ帰宅した俺は、あまり気分のよろしくないまま自室のベッドにうつ伏せで倒れ込んでいた。瞳を閉じ、全てを放り投げるようにして意識を闇へと沈ませる。
 昔から、考え事があるときはこうして意識を飛ばすのが俺の癖だ。いつの間にか軽く眠りに落ちていたりするから、没入しすぎるのも困りものだが。
 そう、困りものだが。結局。気付けば、俺は眠りに落ちていた。

 夢も見た。俺と妹に血縁関係がないというトンデモない夢だ。

 眠りから覚めた後、俺は全身で現在時刻の空気を感じ取る。いつの間にか身についたスキルだ。ふむ……まだ夕方、おそらくは帰宅して一時間も経っていない具合だろう。
 昼寝は心を落ち着かせるし、疲れた頭や体を休ませることが出来るが、あまりに寝過ぎると時間を無駄に使った喪失感に苛まれるのが玉に瑕だ。今回は特に時間を浪費したと思わずに済みそうで何よりである。
 さて。目覚めたは良いのだが、体を起こす気が湧いてこない。
 どうせずっと部屋にいれば夕飯の時間になって、妹のどちらかが起こしに来てくれるだろう。それまでは少し考え事をしようじゃないか。
 胸中にに浮かぶ姿は彩夏。昔からそうだったが、彩夏は兄妹の壁という物をあまり感じていないような気がする。
 普通、彩夏や冬乃と同じ高校一年生くらいの年頃の女子は、父親はもちろんのこと兄弟とも必要以上の接触を避ける傾向にあると友人から聞いている。
 高校一年生となれば、十五、六歳ほど。思春期まっただ中で、女子に限らず多感な時期だ。家族とはいえ――いや、むしろ家族だからこそ側にいて欲しくないのだろう。父や男兄弟の下着と己の下着を纏めて洗濯されることを嫌がったり、手を触れられるのも、挙げ句目を合わせることすら拒否する者もいるらしい。
 その点彩夏は自ら進んで引っ付いてくるあたり、世間一般の妹とはズレが生じていると言える。あいつが俺を嫌がる素振りを見せたことは一度とてない。むしろ俺が彩夏の接近を嫌がったら怒りの表情を見せるのではなかろうか。
 一方の冬乃はと言えば、彼女も彩夏ほどではないにせよ俺との距離は近かったりする。俺がリビングのソファに座ってテレビを見ていたら、無言で隣に腰掛けていつの間にかこちらへ身をもたれ掛かってくるし、ホラー映画を見ていれば腕にしがみついてくるし、今みたいに俺がベッドに倒れ込んでいれば目と鼻の先にその顔を寄せているし。いや、これって十分彩夏レベルなんじゃないか。それにしても、冬乃の睫毛って結構長いんだな、あとなんか良い匂いする――、
「――ってなにしてんだ!?」
「きゃっ」
 俺が勢いよく飛び上がったからか、冬乃がか細い悲鳴を上げる。悲鳴を上げたいのはこっちだ。
 俺は全力でベッドを這い、冬乃から距離を取った。急の出来事に胸の鼓動が乱れているのを自覚する。いや、これは予想外に過ぎる。妹が顔を寄せてきていたら誰だって驚く。当然だ。
 とりあえず落ち着け俺。深呼吸してリラックスすべきだ。多分冬乃のことだから俺を慮って様子を見に来てくれたのだろう。あるいは夕飯が出来たので呼びに来たとか。それ以外にない。それ以外であってほしくない。
 ちら、と冬乃を見れば、どこか歯痒そうな表情をその顔に浮かべているのがわかった。おい。
「……ふ、冬乃、ゆ、夕飯出来たのか?」
「あ、うん……。そうよ」
 うん、やはりだ。彩夏のようなスキンシップ目的で冬乃がここに来るはずはない。
 所詮は俺の決めつけだという思いが浮かび上がってこないではなかったが、認めたが最後俺は何か良からぬ真実に辿り着いてしまいそうなので心の奥深くにその疑念を仕舞っておいた。二度と出てくるなよ。
「じゃあ……行くか冬乃。わざわざありがとな」
「うん、兄さん」
 俺の言葉に応えた冬乃の顔には、先ほどの残念そうな思いは見て取れず、代わりに惚れ惚れするような笑みがあった。
 いつも物静かで感情の起伏が少ない冬乃がこのような表情を見せるとは、珍しいこともあるものだ。ちょっとだけ気分の良くなった俺は、つい先ほどの出来事はけろりと忘れて自室を後にした。遅れて冬乃も着いてくる。
 廊下には、食欲をそそる匂いが立ち籠めていた。俺の部屋は二階に存在し、家族が顔を突き合わせて食事するリビングは階下にあるので、キッチンからここまでこの素敵な香りが届いてきたと考えて良いだろう。
 それにしても良い匂いだ。思わず腹を押さえてしまうほどに食の欲求を刺激する。冬乃からの同意を得たくて、俺は振り向きざまに言った。
「なあ、彩夏の手料理はやっぱり美味そうだな」
「うん……。――彩夏だけずるい」
「……、……なんか言ったか、冬乃?」
「いえ、なんでもないわ。兄さん」
 訊いた俺に、超スピードで返答する冬乃。…………なんでもない、ね。
 今確かに冬乃は、「彩夏だけずるい」と言ったような気がするのだが――。


「「ごちそうさまでした」」
 彩夏謹製の手料理を食べ尽くし、冬乃と共に手を合わせる。
 結構大雑把な性格をしているが、彩夏はなかなかどうして料理が上手い。料理の腕においては冬乃は彩夏に一歩劣り、俺は二人の足元にも及ばない。まったく妹様々だ。
 俺たちは現在、三人暮らしをしている。掃除、洗濯、料理――家事の担当は俺たち兄妹の当番制だ。
 両親はいない。いるのは父親だけだが、その父親も家を空けているのがしょっちゅうだ。
 両親は離婚している。俺がまだ幼く妹たちが生まれたての頃、仕事に情熱を傾けすぎた親父は顔も覚えていないお袋に愛想を尽かされ逃げられたためだ。それ以来改心して俺たちをここまで育て上げた親父は、再び仕事への情熱を再燃させて各地を飛び回る生活を続けている。
 そういえば何の仕事をしているのか詳しく聞いたことがないな。今度訊いてみよう。
 そんなことを考えつつ、俺は冬乃と自分の食器を重ね、流し台へと運ぶべく立ち上がった。
 我が家のルールでは料理当番が食器洗いも兼ねるので、今晩の食器洗い係は彩夏ということになる。リビングと一繋ぎのキッチン、その流し台の前には、今流行の歌謡曲を口ずさみながら食器を洗う彩夏の後ろ姿があった。
 彩夏の即席鼻歌ライブは振り付けも着いているらしい。と言っても体を左右に振り振りするだけだが、それに合わせてピンク色の彩夏用エプロンがひらひら舞い踊る様は見ていて面白い。
 悪く言えば彩夏は落ち着きがない。だから小動物のような印象を抱かせる。例えればハムスターとか。
 食事を頬一杯に詰め込み頬張る様子などまさにそれだ。対し冬乃は気高い猫といったところだろうか。本当に対照的な姉妹である。
「わたしの気持ちは、誰かに量られるものじゃないから~♪」
 彩夏は俺の接近に気付かず、最近テレビからよく流れてくる歌を口ずさむ。
 自分の世界に入り込んでいる彩夏の邪魔をするのは気が引けるが、一応食器を渡すのが俺の仕事だ。
「彩夏、おい彩夏」
「あなたがわたしを――って、ありゃ、兄貴?」
 俺が声をかけると、振り返った彩夏がにへら、と笑顔を見せる。何か嬉しい要素あったか?
「……お、食器持ってきてくれたんだ。さんきゅ、兄貴」
 俺が抱えている二人分の食器を見つけた彩夏が、感謝の言葉を述べつつそれを受け取る。石鹸によって泡立った流し台にそれをぶち込んだ彩夏は、続いて俺の顔を穴が開くのではないかと思うほどに凝視した。
 俺と彩夏の間には二十センチほどの背丈の差があるから、畢竟、下から見上げられる形になる。だからといってどうということはないが。
「ねぇねぇ兄貴。『嬉し恥ずかし☆兄と妹、ドキドキ共同作業☆』……してみない?」
「それって皿洗いだよな?」
 皿洗い以外あり得ないだろうが一応問うておく。
「それ以上をお望み?」
 ニヤリ、と口角を上げて笑う彩夏。もろに悪役顔だ。ていうかそれ以上って何だよ。
「――彩夏、馬鹿な事言って兄さんを引き止めないの。皿洗いなら私が手伝ってあげるわ」
「ちぇ、冬乃」
「悪かったわね、あなたの妹千織冬乃で」
 言ってキッチンに姿を見せたのは冬乃。さっきまでリビングにいたはずだが、俺たちの会話を聞きつけてやってきたのだろう。
 彩夏の考えていることはわからないから、ここは双子の妹たる冬乃に任せることにした。
「冬乃、悪いが彩夏を手伝ってやってくれ」
「兄さんが言うなら喜んで」
 別に彩夏が下品というわけではないが、冬乃は上品な笑みを浮かべて頷いた。随分と嬉しそうだ。
 それに比べ隣にいる彩夏は先ほどの表情とは一転不機嫌そうに頬を膨らませる。いったいこの二人の間に何が起こっているんだ。女心と秋の空ってか? 今は春だが。
 ……まあ、何でも良いけど、遠くない内に良からぬ事が起きる気がする。なんとなく。
 あくまで気だし、起こるとも限らない。今の時点では気にするだけ無駄だ。
 折角冬乃が彩夏の手伝いをする――つまり姉妹仲良く家事に勤しむのだから、邪魔者である俺はとっとと退散するに限る。
 くるりと踵を返し、俺はキッチンを後にする。そんな俺の耳に、流れる水の音と共に二人の声が届いた。
「冬乃、ちょっとその目障りなものどうにかならない? あたしの腕に当たってる」
「目障り? ――ああ、ごめんね彩夏。これが当たっていたら彩夏がどれだけ傷付くか考えもしないで。ごめんね?」
「もう既に軽く傷付いてるよねあたし。喧嘩売ってるよね、ねえ喧嘩売ってるんでしょ冬乃?」
「彩夏が買うにはちょっと高い喧嘩なんじゃない?」
「ぐぐぐ、これが持つ者の余裕か……! ふぁっきん!」
 聞こえてきたシスタートークは聞き流すことにした。あと彩夏の口から飛び出した下品な言葉も。
 ただ、兄である俺が何かを言うのであれば。小高い丘にも、平原にも、また違った趣と魅力があるということのみである。
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